診療概要

大腸がん

当院の大腸がんの外科治療の実績

 わが日本の大腸がんの患者さんは急増しています.
当法人では年間約2万件もの大腸内視鏡検査を行っており,大腸がんの発見に努めています.
開院後の当院の原発性大腸がんに対する切除症例数は年間あたり160例から170例です.
(当院は現在開院して2年ほどになります.開院から1年間に161例,昨年1年間では170例です.)
これは千葉県のトップクラスの大腸癌手術症例数です.
現在,さらに増加傾向にあります.
そのうち腹腔鏡下手術による切除症例が約70%を占めます. 
 
当院の大腸がんに対する腹腔鏡下大腸切除術について 
~最新の術式,単孔式腹腔鏡下大腸切除術も施行しております~
 
その大腸がんに対する腹腔鏡下大腸切除術についてお話します.
従来の開腹術ではお腹を15~20cmくらい切開し開腹し手術を行います.
一方,腹腔鏡下大腸切除術は
下の写真に示すように,お腹に4か所ないし5か所の5-12mmの小さな穴をあけて手術を施行いたします.
  
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  また,当院では単孔式腹腔鏡下大腸切除術といって3cmほどのおへそに開けた1か所の穴からのみでの大腸の切除も行っております.
この場合,創(キズ)はおへその部分のみ(場合によっては,おへその部分+5mm程度の穴の2か所ということもあります.)です.
術後1カ月ほど経過する頃には大腸切除術を受けたのかどうか,それさえ分かりにくくなる状態になります.直腸を切除しています. 
   image004.gif開腹手術では下のようなキズになります。

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腹腔鏡下手術は開腹術にくらべて

・小さいキズで手術をするので,術後の痛みが軽く早期の離床が可能.
・腹腔内臓器が外気にさらされないので,腸蠕動の回復が早い.
・スコープを使っての拡大視の効果を得て,より緻密な手術が可能である.
・術後の腸閉塞のリスクがほとんどない

など
の利点が挙げられます.
 
その方法ですが,
4か所から5か所の穴で手術を行う場合について・・・腹部内臓がおさまる腹腔内に二酸化炭素ガスを送り込みながらお腹を膨らませた状態を保って手術操作を行うスペースを確保します(気腹).
そして,へその部分にあけた穴から腹腔鏡というカメラ(下の写真A)を腹腔内に挿入しておなかの中の状況をモニター画面で映し出します.
そのモニターの映像を確認しつつ,残る3か所ないし4か所の穴をあけて,そこから鉗子という小さめのマジックハンドのようなもの(下の写真B)を用いて術野を展開して手術操作を行います.組織を凝固切開するための電気メスやエネルギーデバイスといって血管を出血させることなく安全に切離できる装置(下の写真C)なども使用して手術を進めます.
 
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写真A
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写真B
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写真C
  
おへそ1か所の穴で手術を行う場合について…(4か所ないし5か所の穴からの場合と同様に気腹をします.)
おへその部分にあけた2.5cmから3.5cmの1か所の皮膚切開から3本のポートという直径5mmの筒を入れます.
そのうち1本にカメラ,残る2本に術者の右手,左手で持つ器械,装置を挿入して手術操作をします.
4か所ないし5か所の穴で手術を行う場合に較べて手数が少なく,また,術者の両手,カメラが近接した位置にあり操作域が制限されます.
そのため腫瘍の局所の状況,占拠部位など術前の検査結果によって適応を判断いたします.
 
4個ないし5個の穴で行う場合も,1個の穴で行う場合も手術操作自体は同様に進めます.
 
鉗子 ,電気メス,凝固切開装置などを用いて大腸,腸管膜の剥離を必要とする部位を剥離します.
特に「剥離」の操作に関しては,腹腔鏡によって拡大視効果を得られますので繊細な剥離操作を行うことが可能になります.
郭清すべきリンパ節を含む腸管膜を切除する側に付ける位置で大腸を支配する血管を処理します.
切除すべき大腸が「ぶらぶら」の状態になったところで,気腹を解除します.
そして,へその切開創から腸をお腹の上に持ち上げて大腸を切除し標本を摘出します.
続いて,切り離した腸をつなぐ(再建する)わけですが,大きく分けて2つの方法で行います.

すなわち,
①   気腹を中止した状態のまま,お腹の上で腸をつなぎ合わせて腹腔内に戻す場合
② 再度,気腹を行って腹腔鏡下に腸をつなぎ合わせる操作を行う場合
があります.
 
そして,切開創を縫合して手術を終了します.
当院で施行した手術症例から
通常の腹腔鏡下手術(5か所の穴で手術)を受けた患者さんのおなか,単孔式(へそからの1か所の3cmほどの穴で手術)腹腔鏡下手術を受けた患者さんのおなか,それぞれの写真を後に掲載しました.
 
特におへそ1か所で行う単孔式の手術の場合,時間の経過とともにキズが収縮しますので,手術を受けて数週間経ってキズが収縮してくると「おへそ」をじっくり見ないと手術を受けたことがわからなくなります.
なかにはじっくり見ても本当に分からなくってしまう患者さんもいます.
4つないし5つの穴で行う腹腔鏡下手術にくらべて「整容性」という意味では優れた術式だと言えます.
 
当科では以上のような大腸がんに対する腹腔鏡下大腸切除術を積極的に施行しております.
 
検査の結果,腹腔鏡手術の適応でないと判断された患者さんには,もちろん通常の開腹術(お腹を大きめに切開して手術)も施行しております.
個々の患者さんにとって最適な治療法を検討し,提供させていただくよう努力しております.
 
以下,当院での手術症例をお示しいたします.

腹腔鏡下低位前方切除術後(直腸の切除)の患者さんのお腹(図①)と
腹腔鏡下高位前方切除術後(直腸S状部の切除)の患者さんのお腹(図②)です.
5か所の穴で手術をしたケースです.
開腹術の場合15~20cmの皮膚切開をおきますが腹腔鏡下手術は小さなキズで行います.
開腹術にくらべて,その他にもいくつかのメリットがあるのは上記のとおりです. 
 

image017.jpg図①
image019.jpg図②

 

 
単孔式腹腔鏡下S状結腸切除,術後4週くらいの患者さんのお腹の全体像(図③)と創部の拡大写真
(図④)です.
手術後1カ月くらいすると本当にキズが小さくなります. 
  
 

image021.jpg図③
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図④


 
単孔式腹腔鏡下高位前方切除術後(直腸の切除),
4週の患者さんのお腹の全体像(図⑤)と
創部の拡大写真(図⑥)です.
このケースは,特に小さなキズで施行することが可能でした. 
 

 

image025.jpg図5
image027.jpg図6

  
 
単孔式腹腔鏡下回盲部切除後の患者さんのお腹の全体像(図⑦)と創部の拡大写真(図⑧)です.
手術から1カ月くらい経つと写真のように小さくなります. 

 

image029.jpg図⑦
image031.jpg図⑧

 
  
 
過去に開腹手術の既往のある患者さんも前回手術の術式,前回手術からの期間もよりますが,
腹腔鏡下大腸切除が可能な場合が少なくありません.
過去に上腹部の手術既往があった患者さんに腹腔鏡下S状結腸切除を施行したケース(図⑨)と
過去に下腹部の手術既往があった患者さんに腹腔鏡下高位前方切除(直腸S状部の切除)を施行したケース(図⑩)です. 

 

image034.gif図⑨
image035.jpg図⑩


 
腹腔鏡手術の術中写真です.
スコープによる拡大視効果を得て,より繊細な操作が可能です


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当科では手術が必要であると判断された場合に,2週間以内に手術が行えるように努力しております.
手術の適応,治療の流れなどにつきましては,
辻仲病院柏の葉 消化器外科,大腸肛門外科,外来担当医まで遠慮なくご相談ください.

文責:消化器外科 矢野 匡亮