診療概要

診療概要

1)大腸がんなどの悪性腫瘍
一部の進行したがんを除けば、手術は腹腔鏡下手術で行います。進歩の著しい鏡視下手術の分野において、過去10数年の蓄積があり、5年生存率や非再発率も他の高度医療センターと変わりはありません。
最近は、単孔式(SLS)の手技も始めることとし、より低侵襲であり、かつ根治性の高い手術を追及しています。
 
2)炎症性腸疾患(IBD)
近年、クローン病は潰瘍性大腸炎(UC)に比し、著しい増加を示しています。クローン病の初発病変が肛門病変であることも多いので、非定形的な痔瘻や多発性裂肛などからクローン病を疑われて確定診断されることが多くなっています。これら、クローン病やUCに対する治療法の進歩は著しく、多くの新しい画期的な治療薬が使用できるようになりました。難治性が高かったこの分野でも完全治癒の希望を持つことができます。
当院では、過去の多くのクローン病、UCの治療実績を基礎として、新しい時代の治療に邁進しているところです。
 
3)大腸機能性障害(IBS)
ストレスの多い近年、腹部不定愁訴の患者は増え続けています。下痢気味、便秘、あるいは両方が混在するというような便通の異常が主として小腸・大腸の機能異常によるものという理解が進んできました。世界的な標準を示すLOMAⅢを参考にして、このようなIBSの患者の診断治療も積極的に行っています。
 
4)排便出口障害・直腸瘤・直腸重積症
便秘と長く診断されて来た人の中には、種々なタイプがあります。前述のIBSの便秘型もあれば、習慣性のものや器盾的病変が原因のものなどもあります。最近この便が出ないという人の中で排便出口障害(ODS)が原因で便秘である人が多くなってきました。このODSは比較的新しい概念で、主として欧州が盛んに研究しているものです。
排便時の残便感やいきみ排便、あるいは用手介助排便などが主たる症状で、長年にわたると会陰下垂や骨盤低下垂の原因になります。これらの人たちを排便造影検査してみると、直腸下部が前方に突出する直腸瘤(中国名;直腸前突)や直腸がジャバラ状あるいはアコーディオン状にたるんでいる直腸重積が認められます。
これらの直腸のゆるみや過長が骨盤低の下垂と共に正常な排便を阻害し、肛門の出口で便が詰まって出ないような閉塞感を起こして排便出口障害(ODS)となるのです。このODSを正しく診断するためには、排便造影(X線、MRI)は欠かせません。また極めて専門性が高い医師でないとしっかり治療できません。
当センターでは10年以上前から、この直腸瘤などの外科治療を積極的に行っています。今日では直腸瘤だけの者に対しては、RARIEMESHによる経腟的補強術を行っています。また直腸重積も伴っている例では、STARR(自動縫合器による直腸部分切除)を日本で唯一行っており、数多く排便困難例を治癒させています。STARRは当センターが中心となって今後ゆっくりと日本各地へ広がっていくものと思われます。
 
5)直腸肛門疾患
直腸肛門部には悪性腫瘍の他にも、GIST、肉腫、仙骨前腫瘍、仙骨前のう胞、奇形腫、血管腫など多様な病変があります。視診、触診の他、肛門エコー、CT、MRIなどを用いて正度高い診断をして的確な治療を行わなければなりません。時には急性白血病や悪性リンパ腫などの意外な病気が直腸肛門部の初発病変であることも忘れてはなりません。
 
6)痔疾患
内痔核、外痔核はいぼ痔と俗称されていますが、痔疾患の半数以上を占める病態です。人間には元々痔核クッション組織が生まれつき存在していて、それが腫脹したり、脱出したり、血栓になったりして症状をきたすことを「痔になった」というのです。痔核クッションは肛門をしめてガスを漏らさないことにも役立っています。
今日では、痔核の治療は大別して薬などによる保存的なもの、注射療法(PAO、ZIONE)、ゴム輪結紮法などのような準根治的治療、そして結紮切除法(LE)やPPH(自動縫合器による吊上げ固定術)などの根本手術に分けることができます。これらの治療法はそれぞれ利点欠点があるので、痔核の大きさや脱出の程度、出血の有無など総合的な判断から適応を選ぶことが大切です。当然のことですが選択肢が多い故に患者さんとの十分なIC(インフォームドコンセント)が重要であるのは他の疾患と同様です。
一方、痔瘻は単純なものから複雑なものまであり、その診断と知慮縫い高度な専門性と熟練が必要です。今日では肛門エコーやMRIによって客観的な複雑痔瘻の詳しい所見を得られるようになりました。肛門括約筋機能を十分保存しながら痔瘻を完治させることができるのです。しかしながら、いまだに10年以上痔瘻を放置して極めて深い複雑痔瘻になり、しかも痔瘻癌を発生された症例も認められます。肛門周囲膿瘍を切開され、一時的に症状は消失しても痔瘻としては残存することは多く、また何度も膿瘍切開を繰り返すうちに極めて進展した複雑痔瘻になってしまい、やっと当病院を見つけて来た患者さんも多いのです。痔瘻はやはり痔瘻と診断された時点で速やかに根本手術して治しておくべきでしょう。
次に裂肛ですが、裂肛は排便時の過剰ないきみが硬便などと共に肛門上皮に創を作ることから始まります。一般の人は生涯のうちに何度か排便時肛門が痛いということを経験しています。これは「裂れた」ことの証明です。しかし、便が正常であればそのうちにその「裂れた」肛門上皮は自然治癒しています。しかし、いきみ排便や、便秘による硬便、あるいは下痢便を繰り返している人は、元へ戻らなくなり「裂肛」という肛門上皮の血管に至るのです。
裂肛も初期のうちは薬や便通の調整で治りますが、裂肛を繰り返していると裂肛潰瘍の状態になり、肛門ポリープや見張りイボなどを併発して、いよいよ排便時の痛みが強くなり、排便障害をきたすことになります。この辞典は手術的に治療することとなり、内括約筋切開(LSIS)や裂肛病変の切除ドレナージ形成が必要となります。
さらに裂肛を繰り返すと瘢痕拡張となり、肛門が極めて細くなります。エンピツの太さくらいまで肛門狭窄が進むことは稀ではありません。この場合は当院ではY-V型、あるいはV-Y型肛門狭窄形成術を行っています。SSG型に比べ術後の皮膚瘢痕が小さく、見た目も良いためです。
この他尖圭コンジローマというパピローマウィルスの感染した肛門皮膚病変も多く認められます。いわゆる性的接触による感染症による病変ですが、HIVを合併していることもあり注意が必要です。電気メスで焼灼することが最善です。痔の手術でレーザーは不要なものです。
次に直腸脱を述べます。直腸脱は完全型と不完全型があり、不完全型には先ほどの直腸竜や直腸重積を含めることもできます。完全直腸脱葉主として高齢の女性に多いが、若年層でも30~40cmの直腸脱を認めることができます。直腸脱は仙骨面への直腸固定がずれること、肛門括約筋不全があること、S状結腸の直腸への重積があること、また深いダグラマ窩であったりすることが重なり合って生じます。若年から中高年までの完全直腸脱は、当センターでは腹腔鏡下固定術を行いよい成績を得ています。
しかし、高齢者の直腸脱は、デロルメ法やアルトマイヤー法といった根治的な手術をしても再発することが多いものです。日本で良く施行されているGANT-三輪法は欧米から見ると何とも奇妙な方法であり、日本独特の手術法であり、手術の王道ではありません。また最近ZIONEという痔核に使う硬化剤を多量に直腸周囲に注射するという方法も少しずつ行われていますが、これも科学的根拠に乏しいと考えられます。