診療概要

骨盤臓器脱の診断と治療

骨盤臓器脱とは、「骨盤内の臓器が腟や肛門から脱出してくる病気」のことをいいます。
骨盤臓器脱には、直腸瘤・直腸脱・子宮脱・膀胱瘤などのさまざまな疾患があります。またこの骨盤臓器脱で悩んでいる方は、肛門の病気・尿路系の病気・婦人科の病気などを伴っていることもよくあるため、複数の診療科が協同して治療に当たる必要があります。
辻仲病院柏の葉では、「骨盤臓器を総合的に診療する」ことをコンセプトに、大腸肛門科・泌尿器科・婦人科の3つの診療科が連携し、骨盤臓器脱のあらゆる状況に対応できる体制を確立して診療にあたっております。
【臓器脱外来】
診察時間:  月・火・水・金曜 14:00~17:00 
予約時間:  月曜~土曜 14:00~17:00
担当医師:  月)西澤医師  火)赤木医師  水)前田医師  金)赤木医師 
いずれも予約制となっておりますので、電話連絡の上受診下さい。          
 
【骨盤臓器脱とは】
骨盤底筋群の機能低下により、骨盤内臓器が下垂して脱出する病態です。特に、中高年以後の多産あるいは難産であった女性における、子宮脱、膀胱脱や腟脱を指すことが通例です。
著明な場合は、全てのそれら臓器が腟から脱出します。立って歩いていると脱出してくる、あるいは、排便時の怒責で脱出してくることが多い訴えですが、なかには戻せなくなり嵌頓(かんとん)した状態で来院される場合もあります。
恥ずかしいので、永年頑慢していた人も多く、尿失禁や便失禁を供っている場合も見かけます。また同時に、直腸脱も併発し、骨盤内臓器が全て脱出してしまう女性も存在します。
これらのような場合は、大腸肛門科、泌尿器科、婦人科がチームとして医療を行う必要があり、また同様に他の骨盤内病変の治療にもしばしば協同でチーム医療を行うことが、「骨盤臓器脱診療部門」の役割です。尿失禁、排尿困難、脱出による歩行困難あるいは下腹部・肛門部の違和感があります。
 
【手術実績】
当院における手術実績(~平成23年12月)
骨盤臓器脱(直腸瘤、子宮脱、膀胱瘤、直腸脱):217例

【骨盤臓器脱専門外来で専門診療を行っている疾患について】
骨盤臓器脱専門外来では、骨盤臓器脱を中心として、女性の骨盤底に起こるあらゆる疾患の治療を専門的に行っております。
骨盤臓器脱専門外来で取り扱う疾患(骨盤臓器脱・骨盤底疾患)
・ 直腸瘤、子宮脱、膀胱瘤など →骨盤臓器が腟から脱出してくる病気
・ 直腸脱 →骨盤臓器が肛門から脱出してくる病気
・ 会陰裂傷、直腸腟瘻 →肛門と腟の間の会陰(えいん)が傷ついて生じる病気

【骨盤臓器脱に対するメッシュ手術(TVM手術)】
昔から行われていた骨盤臓器脱(直腸瘤、子宮脱、膀胱瘤、腟脱)の手術として、「子宮を取って、腟壁を強く縫い合わせて補強する方法」が行われていました。
この方法は歴史の長い実績のある術式なのですが、「再発率が高く、子宮を失ってしまい、腟がきわめて狭くなる」など多くの欠点がありました。
これらの欠点を克服すべく開発された方法として、最近フランスで「TVM手術」という術式が確立されています。
これは特殊なメッシュを用いて脱出臓器を修復する方法であり、「再発率が圧倒的に低く、子宮を取る必要がなく、腟も狭くならない」など多くの長所があるため、現在欧米では主流となってきた術式です。
わが国でもこのTVM手術が徐々に普及してきており、当院でもこの方法が骨盤臓器脱治療の主役となっています。

【直腸脱】
直腸脱とは、直腸の支持が弱くなることで、直腸が肛門から脱出してくる疾患です。
この直腸脱は、高齢の女性によく見られる病気ですが、まれに若年者に見られることもあります。脱出する腸の長さはさまざまで、ほんのちょっとしか脱出しない人もいれば、30cmくらい脱出するケースもあります。
直腸脱は通常排便時だけ脱出して、排便後には戻ることが多いのですが、重症化すると脱出したままになります。このような場合、出血や痛みを伴ってくることもあります。
直腸脱は薬では治らないので、手術が必要となります。
直腸脱の手術は、おなかを切って行う手術(経腹的手術)と、肛門側から行う手術(経肛門的手術)の二種類に分けられます。若年者で全身麻酔のリスクが低い場合には、通常成績の良い経腹的手術(直腸固定術)で治療を行います。一方高齢者の場合には、麻酔のリスクが低い経肛門的手術が行われることが大半です。
この経肛門的手術には、直腸粘膜を抜去して筋層を縫い縮める「デロルメ法」や、脱出する直腸脱を切除して腸管と肛門を吻合する「アルトマイヤー法」や、肛門の締まりを正常に近づける「ティールシュ法」などがあり、状況に応じて適切な方法を使い分ける必要があります。
高齢者の直腸脱は、どうしても一定の頻度で再発する可能性があるのですが、再発した場合には再度治療を行うことによって、最終的には全員の直腸脱を治すことができています。
当院は大腸肛門科・骨盤外科の専門病院であり、全国屈指の直腸脱の手術経験を有しています(年間50例以上、通算1000例近く)。直腸脱で悩んでいる方は、一度受診されてはいかがでしょうか。

【直腸瘤】
直腸瘤とは、直腸と腟の間の壁が弱くなることで、直腸が腟から脱出してくる疾患です。
直腸瘤の症状として、「排便障害」の訴えと「腟がふくれてくる」という訴えが主なものとなります。重症の直腸瘤では、「排便時に腟を押さえないと便が出ない」とか、「腟がピンポン玉のようにふくれてくる」という訴えが起こります。
この直腸瘤は、「排便造影検査」という検査で診断がつきます。この検査は、肛門から少量のバリウムを入れて排便状態をX線撮影する方法であり、直腸瘤の診断には欠かせません。
軽症の直腸瘤の場合には、排便コントロールを行うことで「病気とずっとつきあっていく」こともできるのですが、重症の直腸瘤を治すには手術が必要となります。
直腸瘤の手術には、「腟側からメッシュを入れて補強する方法(TVM手術)」と、「肛門側から弱った壁を縫い縮めて補強する方法」の二種類があり、病状に応じて術式を使い分けています。
直腸瘤で悩む方全員に適切な治療を行うためには、「腟側」と「肛門側」のどちらか一方だけでは不十分であり、両方の術式を修得した医師が適切な術式を選択して手術を行う必要があるのです。
当院は大腸肛門科・骨盤外科の専門病院であり、全国屈指の直腸瘤の手術経験を有しています(年間50~100例、通算1000例近く)。直腸瘤で悩んでいる方は、一度受診されてはいかがでしょうか。

【子宮脱・膀胱瘤】
子宮脱・膀胱瘤は、それぞれ子宮・膀胱が腟から脱出してくる疾患のことをいいます。
治療法には大きく分けて、①骨盤底筋体操などの保存的治療、②ペッサリーやフェミクッションなどの装具を用いる方法、③手術、という3種類があります。本人の希望を重視して、この3種類の中から治療法を選択することになります。
①の保存的治療や②の装具を用いる方法は、「疾患とずっとつきあっていく」治療法です。これらの方法は簡単であり、手術で体を切る必要もないのですが、骨盤臓器脱を根本的に治す方法ではありません。
いっぽう骨盤臓器脱を完治させて、今後ずっと悩みから解放されたいと考えるのであれば、やはり手術しか方法がありません。現在当院ではこの子宮脱・膀胱瘤の手術法として、メッシュを留置する方法(TVM手術)が主役となっています。
この方法は再発率が低く、子宮を取る必要がなく、腟も狭くならないなど多くの長所があります。
子宮脱や膀胱瘤を有する方は、他の婦人科疾患(子宮筋腫など)や泌尿器科疾患(尿失禁など)を合併していることもよくあります。
このような場合には、骨盤臓器脱を治すのみならず、婦人科や泌尿器科と連携してこれらの病気も同時に治療を行います。

 
【会陰裂傷】
会陰(えいん)とは、腟と肛門の間にある丈夫な壁のことをいいます。
会陰裂傷は、経腟分娩の際にこの会陰が裂けて生じるものであり、このとき腟と肛門の間にある肛門括約筋が断裂してしまいます。
会陰裂傷が起こった場合、通常分娩直後に産科医師が縫合を行うため、大半の会陰裂傷はそれだけで問題なく治癒します。
ただし縫合がうまくいかなかった場合には会陰が裂けたまま傷が治ってしまうため、会陰の壁がごく薄くなり、便漏れ・ガス漏れ・性交障害などが生じるようになります(陳旧性会陰裂傷)。
陳旧性会陰裂傷は保存的治療(薬)では治らないので、「会陰形成術」という手術が必要となります。
この手術で断裂した肛門括約筋を修復し、薄くなった会陰を元通りの丈夫な組織に形成します。

 
【直腸腟瘻】
直腸腟瘻は、最も難しい病気のひとつであります。これは、最も多くは分娩時損傷によって生じるもので、高さによって高位、中位、低位と分けられます。
直腸の手術などによるものは高位、中位が多く、分娩損傷では低位のものがほとんどです。
腟からガスや便汁が出るといった症状で分かることがほとんどであり、直腸腟瘻が発症しても身体が重篤になることはほとんどありません。多くの場合、この病態が発症した時点で、その当該施設で修復術が行われます。婦人科では、会陰を直腸へ観音開きして層々に縫合してくる手術が多いですが、失敗により難治瘻孔になることがあります。
当院では、直腸移動弁修復術を主として採用していますが、コラーゲンプラグメッシュで充填して瘻孔を防ぐ方法もあります。これは簡便で苦痛も少なく、組織親和性が良ければ理想的な手技ですが、適応の多くが初回で中高位の症例です。異なる適応の症例に施術することで、再発につながることがあります。
逆に、一時的に人工肛門にすることで、一回の手術で治癒する可能性が高まるとも言えますので、この点での十分なインフォームドコンセントが欠かせず、初回手術が重要となる疾患です。